2011年09月18日

全国手漉き和紙青年の集い2011 龍神村

9月2日から、和歌山県田辺市龍神村で「全国手漉き和紙青年の集い」が開催されました。

台風12号が接近していたので、羽田から南紀白浜行きの飛行機は欠航でした。品川に戻って新幹線で大阪、電車で和歌山まで行き、レンタカーで龍神村に向かいました。有田インターを降りて、みかん畑を抜けて山道を走る頃には、すでに大粒の雨が降り始めていました。数年ぶりに参加する青年の集いですし、「龍神村」という響き。一度は行ってみたい場所でしたので、ほぼ執念で移動していました。

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龍神村だけに、橋には龍がいました。

台風の影響で3泊もお世話になったのは、日本三美人の湯「季楽里(キラリ)」です。日高川の川沿いにあります。内装には、奥野さんの紙がいたる所に使われていて、居心地のいい、ほっとする空間です。温泉も良いお湯でした。

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左側はロビーの天井から下がる和紙のランプ。風に揺れて素敵です。右側の仕切り(?)も、楮の繊維を編んだもの。これ、私も欲しいです。


■9月3日
大雨の中「龍神村アートセンター 山路紙紙漉き工房」を見学しました。奥野さんが漉かれるアートな紙作品と、発色がきれいな草木染めの手漉き紙に感動しました。楮も機械を使わず、手作業で叩いて細かくしているとのこと。漉き道具も自作していると聞いて驚きです。龍神村では、昭和の始めまで松煙作りや山の産物の出荷に利用された「山路紙(さんじがみ)」という紙が漉かれていたそうで、その紙も復活されていました。

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アートな奥野さんの紙作品。DMにも使われた足跡の作品は家族がいた証だと聞いて、福島を思って胸が熱くなりました。

9月14日から25日(日)まで、東大阪市の「ギャラリ―砌(みぎり)」で、奥野さんご夫婦の展示会「明日へ伝えること」が開催されます。


この日に行く予定だった本宮町の熊野神社あたりは、道路が冠水したため行くことができませんでした。この地域でも昭和30年代に「音無紙(おとなしがみ)」という、とてもやわらかい紙が作られていたそうです。ティッシュの普及でなくなってしまったそうですが、アートセンターに展示してあったので実際触ってみると、やわらかくて、ほぼティッシュです。

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その夜は、皆さん持ち寄られた紙を見て、紙の材料である楮の生産、調達、処理、価格などについて話合いでした。それを聞いていて、日本の農業と紙生産の結びつきを考えていました。

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名塩紙。土を混ぜて漉くので耐火性に優れ、防虫効果もあるとこのこと。土の種類で色も異なるそう。ひんやりトロンとした表面が気持ちいい紙です。兵庫県西宮市名塩、次に行きたい産地です。

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新潟県柏崎市、門出和紙の見本帳。かわいすぎる柄。「五感で感じる和紙」という小林さんの言葉が強く心に残っています。おいしい「久保田」のお酒もご馳走様でした。

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岡山県津市、上田さんの紙。バリエーション豊富な色です。

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素材感が面白い竹の紙。京都の竹紙専門店テラさんのブログ「ギャラリーテラ&ショップ 清滝 西陣」にも、今回の青年の集いの記事がありました。


■9月4日
停電でテレビも固定電話もネットもソフトバンク以外のケータイも繋がらなくなりました。崩落や冠水で山を降りる道がなくなり、さらに龍神村にもう1泊することに。日高川はまだまだ増水しているし、ほぼ孤立していたようです。

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増水して水蒸気があがる日高川。

それでも、少し山を下って食料品店に行ったり、ホテル側の「曼荼羅美術館」に行ったり、風情ある「上御殿旅館」を見に行ったり。

お土産で頂いた高野紙の三鈷杵(さんこしょ)の宝来。宝来とは、〆縄の代わりに縁起のいい柄を切り抜いて飾る高野山の風習だそうです。
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■9月5日
朝、雨も上がってようやく下山です。和歌山に戻る下山の道すがら、細い道には木や岩が崩れ落ち、車が横転して家がくずれ、橋には洪水の跡が残り、自衛隊の災害救助車が出ていました。

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先月は福島で津波の跡を初めて見て、今月は和歌山で山崩れと洪水も初めて見ました。天災は恐ろしいです。

東京に戻りニュースを見て、和歌山が甚大な被害に遭っていたことを知りました。迷惑な客にもかかわらず、お世話して下さった事務局の方、龍神村の行政の方、「季楽里」の方々に頭が下がる思いです。



それでも私のメモ帳数ページには、いろんな紙の情報、アイデア、考え、感想がびっしりです。どこにも行けなかった分、充実した時間を過ごすことができ、忘れられない貴重な会になりました。

熊野古道も、熊野大社も、高野山も、くじらの博物館も、那智の大滝も、和歌山には行きたいところがたくさんあります。お天気が良い時にまた行きたいです。

台風の被害から、一日も早く復興されることをお祈りしています。
posted by 来来 at 17:43| 和紙